Graduate School

大学院受験者のみなさんへのメッセージ

大学院(修士、博士課程の両方)で研究をしたい人を、僕を受け入れています。

ただし、外国人研究生は原則として受け入れません。

以下に、大学院受験者のみなさん向けのメッセージを記しておきます。

Shin Mizukoshi’s Seminar 2023

1.メディア論と水越伸のスタイル

メディア論とは、コミュニケーションを媒介するメディアに照準し、その存在がどのように人間や社会を規定しているかを明らかにすること、さらにそのあり方をデザインしなおすことでいかに世界を変えていくかを想像し、創造していく研究領域です。

1990年代に、マスコミュニケーション論、カルチュラル・スタディーズ、社会学、科学技術社会論、記号論などが学際的に結びついて生み出され、現在進行形で発展中です。今や、あらゆるものごとがメディアとなり得る時代であり、私は墓石からロボットまで、コミュニケーションを媒介する事物を幅広くメディアとしてとらえていきます。

水越研究室では、そうしたメディアの忘却された歴史を蘇らせること、現在の状況を批判的に明らかにすること、そしてその未来のあり方をデザインすることなどに取り組みます。

とくに未来のあり方をデザインする営みは、新たなメディア・リテラシーのあり方を模索する研究に結びついています。現代社会ではメディアが不可欠であるにもかかわらず(いや、だからこそ)当たり前の存在として意識されないことが多い。当たり前になったメディアをいかに当たり前じゃなくする営み、今現在私たちを取りまくメディアの生態系をよりよいものに変えていくデザインマインド(手や身体を動かしてなにかを作りながら考えていくようなスタイルのこと)のある実践的な研究に取り組むことができます。

また、メディア・リテラシーを学ぶための方法としてワークショップのデザインと実践を積み重ねてきました。ワークショップを用いて、メディア・アートや情報デザインに結びつくような実践的な研究を行うことも多いです。

いい方をかえると、水越研究室では、メディアという器に乗るテキストやイメージ、コンテンツの分析や、それらを利用するユーザーの実証調査、ファンやオタクの文化研究などはしていません。それらを研究したい人は関西大学の私の同僚の先生方や、国内外のよりよい研究者のところで学ぶのがよいと思います。

私の研究業績については、researchmapというデータベースにほぼすべて登録してありますから、参考にして下さい。

ある日、学生と面談したあとのミーティングテーブルの上(2022)

2.水越研究室で研究できること

私は2024年度現在、1名の博士課程(博士後期課程)の社会人学生と、3名の修士課程(博士前期課程)の学生を指導しています。このうち二人の研究テーマはつぎのとおりです。ちなみに水越ゼミには、他の大学院生やポスドク研究者も参加しています。

  • 「新たな送り手」としてのメディア運営者研究:制作、発信、コミュニケーション
  • ネット時代の公共メディアに関する考察:「NHKプラス」と「BBC iPlayer」を事例として

以下は、前任校(東京大学大学院情報学環・学際情報学府)において、2012年以降に提出された指導学生の修士論文、博士論文の一部分のタイトルです。
私は大学は変わっても大学院での教え方を基本的には変えません。
だから、まずはこれを見てもらうと、水越研究室でどのような研究ができるかの感触がつかめるものと思います。

  • 博士論文
    • 「市民メディア・デザイン:デジタル社会の民衆芸術をめぐる実践的メディア論」
    • 「アトラクションとしての日常に関する実践メディア論的研究」
    • 「声なき想いに物語を:対話的・協働的デジタル・ストーリーテリングの理論と実践」
    • “Niconico Utaite: Platformization of the Creative Culture in Japanese Social Media”
  • 修士論文
    • 「明治期地域社会のコミュニケーション空間の変遷:大日本農会と農談会に見る「農民」の誕生」
    • 「「コト」がうみだす権力と可能性:「情報デザイン」概念をめぐる批判的メディア研究」
    • 「海賊がつくる「大衆の文化」:韓国におけるポップソングの受容と流用をめぐるメディア文化論」
    • 「「お知らせ」が生まれ死ぬとき:文京区における地域の広報文書をめぐるメディア論的研究」
    • 「生活空間における写真のメディア論:物語行為としての写真実践とアイデンティティ構築」
    • 「映像表現教育における「講評会」の研究:表現と受容の循環的活動の可能性」
    • 「2つのおもちゃ:1960年代における玩具の贈与コミュニケーション」
    • 「新しい図鑑の提案:センス・オブ・ワンダーを育むメディア・デザイン論」
    • 「風土の中の劇場:島根県八雲地域における空間論的考察」
    • 「ランキングのメディア論:検索エンジン・ランキングの歴史社会的構成」
    • 「プライバシーポリシーの歴史的変遷:生活者と事業者のコミュニケーションに関するメディア論}
    • 「映画配給のメディア論:産業的制度化とその変容」
    • 「メディア・リテラシーの学校における持続的発展に向けて:教師のライフストーリーからの考察」
    • “Engaging the Audience in Online Activism: Social Media and Environmental Movement in Japan and Sweden”
    • 「カフェとモバイル:都市空間のエスノグラフィー」
    • 「メディア論から「わざ」を問い直す:躰道におけるオンライン稽古を素材として」
    • 「アート・コミュニティとしての美術館の可能性:「とびらプロジェクト」のアート・コミュニケーション研究」

私は過去に約90名の修士課程院生、約30名の博士課程院生の指導をしてきました。
結果として次の3系統の研究に取り組む学生が多かったといえます。

1)メディアの歴史的研究
2)メディアの送り手やメディア表現の現場をフィールドワークする人類学的研究
3)メディア・リテラシーやメディア・デザインに関する実践的研究

ここでいうメディアは、図鑑や劇場からマスメディア、ソフトウェア、SNSまで、その意味するところは幅広いです。
もちろん、これら以外の研究も可能です。

3.どんな学生を受け入れたいか

社会的な問題意識や理論的関心を持ちつつ、軽いフットワークで動ける人に期待しています。本物の思想は、実践のリアリティのなかではじめて鍛えられるからです。メディアをめぐる現象の分析や解釈に留まるのではなく、実社会のなかで新しいメディアの生態系を育み、コミュニケーションの回路を切り拓いていくことに取り組む姿勢を持つ人を望んでいます。

具体的には、次のような人々が研究室に来てくれることを期待しています。

a)情報技術、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムなどに関わる事業体で仕事をしてきた実務家、あるいはアーティストやデザイナーのなかで、現場の仕事を大切に思いつつも、このままではいけない、何かを変えなくてはダメだという批判的な問題意識を持った、いわゆる「批判的実践者(critical practioner)」の人々。

b)情報技術、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズム、アートやデザインなどについて、学部で得た知識や興味関心をもっと深めてみたい、自分独自のおもしろい研究をしてみたいと思う学部からの進学希望者のうち、とくにデザインマインド(手や身体を動かしてなにかを作りながら考えていくようなスタイルのこと)を持った人々。
ここでいう学部というのは、関西大学に限らず、日本全国の大学を意味します。メディア論は学際的な研究ですから、文系、理系、アート&デザイン系を問いません。

c)メディア論に一定以上の知識があり、B)と同じような興味関心やスタイルを持ち、なによりも日本で学ぶ理由や意義のある研究テーマを持つ留学生。

4.受験生からの連絡への対応

私は、修士課程(前期博士課程)、博士課程(後期博士課程)のいずれにおいても学生を受け入れます。

ただし、外国人研究生は、諸般の事情によって原則として受け入れません。

受験前に連絡(contactをご覧ください)をいただいても、必ずお返事するとは限りません。
希望者の志望動機、研究関心のありかなどを私が勘案した上で、必要に応じてメールなどでの相談や、面談(オンラインを含む)に応じます。ご了承ください。

また言うまでもなく、出願期間に入ったら連絡はできませんのでご注意ください。

5.手続、その他

大学院入試の具体的な手続や試験科目などについては、下記をご覧ください。

関西大学大学院入試サイト

受験をする人は、身体に気をつけて、しっかり準備して臨んでくださいね!